文武不岐

旧帝國大学と進学校の野球を嗜んでおります。

文武不岐

【七大戦】第57回硬式野球の部 展望

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高校球界では第100回記念選手権大会の第一回戦が続々と行われ夏の到来を感じる今日この頃。

大学球界では秋季リーグ戦に先立ち8月8日から3日間、今大会で57回目を迎える七大戦・硬式野球の部が北海道大学の主管(於、円山球場・麻生球場)で開催されます。

今回の記事ではその七大戦・硬式野球の部について述べていこうかと思います。

 

 

 

「七大戦」とは

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正式名称は全国七大学総合体育大会。略称は七大戦旧帝国大学の流れを汲む東京大学京都大学東北大学九州大学北海道大学大阪大学名古屋大学の七大学間で行われているため七帝戦とも呼ばれています。七帝柔道を皮切りに他の運動部の間でも定期戦が開かれるようになりました。個別に開催されていた試合を当時北海道大学応援団長を務めていた阿竹宗彦氏の尽力により統括したものが1962年、北海道大学の主管行われた第1回大会とされています。

開催地は七大学持ち回りで、現在、北大→九大→阪大→京大→東北大→東大→名大の順で巡り、今大会の北海道大学主管の大会をもって9巡目に入ります。

 

硬式野球の部 

1.年度別成績

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大会ごとにより参加校数、順位の決定方法が異なりますが、第51回大会以降は7校が揃い1位から7位まで順位の決定がなされています。

 

第56回終了時点の最多優勝は東京大学九州大学の14回。最多連続優勝においても東京大学[第53〜55回]と九州大学[第37〜39回]が3連覇で並んでいます。

優勝率(=優勝回数/参加回数)では東京大学が.467と群を抜いており、次いで九州大学が.286、京都大学が.207となっています。

 

また、七大戦では主管校以外が優勝することを「主管破り」と呼び、大会全体を通しては主管校優勝が多く比較的珍しいものとされていますが、硬式野球の部ではその限りではなく、記録が残されている52回のうち35回が主管破りとなっています。最多主管破りは東京大学の11回。

 

2.試合形式

7校によるノックアウト方式。主管校は一回戦免除となり準決勝からの登場となります。初戦で敗れた3校が5,6,7位決定戦の山へ、準決勝で敗れた2校が3,4位決定戦の山へ移り計9試合が行われ順位が決定されます。

 

硬式野球の部では、七帝柔道と講道館柔道(いわゆるオリンピック柔道)の間に見られるようなルールの差異はありませんが、時間制限が設けられており、試合時間が2時間30分(決勝戦のみ2時間45分)を超えた場合、新しいイニングに入らず勝敗を決する特別ルール(※最後に適用されたのは第53回の5位決定戦。九大 8-11 阪大)が定められております。

 

9回終了時、また上記の制限時間を過ぎてもなお勝敗が決していない場合はタイブレーク方式を採用し、1死満塁の状況から攻撃を開始します。

 

参加校

北海道大学

優勝回数:2回
前回優勝:2005年(第44回九州大学主管)
所属連盟:札幌学生野球連盟

今大会の主管校。前回大会では宮台投手(現・北海道日本ハムファイターズ)を擁する東京大学を初戦で破り硬式野球の部史上初の4連覇を見事阻止。春季リーグ戦では打ち勝つ野球を標榜し、長打率を昨秋の.261から.493まで上げて、札幌学生野球リーグ2位となるチーム打率.253、チームOPS.839を記録を残しました。またベストナイン受賞選手を2名輩出し、リーグ3位となる打率.389を記録し外野手ベストナインを獲得した長屋尚希外野手(4年・愛知県立横須賀)、シーズン3ホーマーを叩き出し一塁手ベストナインを獲得した小川順平内野手(4年・県立船橋)が注目選手に挙げられます。優勝回数こそ最少タイですが、打線がリーグ戦や直近のオープン戦の様に機能すれば、十二分に優勝に手の届くチームでしょう。


東北大学

優勝回数:6回
前回優勝:1988年(第27回東京大学主管)
所属連盟:仙台六大学野球連盟

七大戦準優勝16回、現在も4年連続準優勝継続中とシルバーコレクターに甘んじていますが、近年の安定感は抜群。春季リーグ戦では主戦力とりわけ投手陣に故障が相次ぎ、立て直しを計る間も無く最下位に沈んでしまいましたが、高校時代に野球雑誌内で茨城県の注目投手として名を取り上げられていた谷口直哉投手(1年・下妻第一)がルーキーながら頭角を現しつつあります。野手では昨夏の東北楽天ゴールデンイーグルスとのプロアマ交流戦でヒットを放ち、リーグ戦でも3割を記録した上野瑞己内野手(2年・鶴岡南)の卓越したバットコントロールに注目です。打線の鍵となる関根謙志郎主将(4年・安積)のここぞの長打にも期待がかかります。


東京大学

優勝回数:14回
前回優勝:2016年(第55回東京大学主管)
所属連盟:東京六大学野球連盟

昨秋のリーグ戦にて2002年以来15年ぶりとなる勝ち点を挙げ、今春30名を超える選手が入部しました。選手層が一段と厚みを増したことで、今大会も優勝候補の最右翼となるでしょう。昨秋3勝の味を知る選手は現3年生に多く、今春全試合に登板し東京六大学選抜として侍ジャパンのユニフォームに袖を通した小林大雅投手(3年・横浜翠嵐)をはじめ、勝ち点獲得試合の勝利投手であり宮台投手から背番号1を受け継いだ宮本直輝投手(3年・土浦第一)、左腕ながら140をコンスタントに叩き出す荒々しい投球が持ち味の山下大志投手(3年・豊田西)など投手の頭数に悩まされることはなさそうです。野手の注目選手は昨秋打率.308をマークし、阪神タイガースの菊池スカウトを唸らせた5ツールプレイヤーの辻居新平外野手(3年・栄光学園)。また山下朋大内野手(3年・東海)、新堀千隼内野手(3年・麻布)の三遊間コンビによる攻撃的なフィールディングは見応えありです。


名古屋大学

優勝回数:9回
前回優勝:2017年(第56回名古屋大学主管)
所属連盟:愛知大学野球連盟

前回大会では前評判の高い東北大学を退け2006年以来11年ぶりの優勝を果たしました。残念ながら春季リーグ戦では降格の憂き目にあってしまいましたが、昨年度の七大戦出場選手は当時2,3年の選手多く今大会も良いイメージで臨んでいる選手が多いかと思います。前回大会で反撃の口火を切り最終的に全方向へヒットを放ち猛打賞を記録した鷲見渉副主将(4年・国立)、2点タイムリーの三塁打を放った溝口玄真内野手(4年・大垣北)が再び存在感を出せるか注目していきたいところです。絶対的エース野崎投手が卒業した今、継投策で相手打線を揺さぶれるかが試合を左右しそうです。


京都大学

優勝回数:6回
前回優勝:2013年(第52回大阪大学主管)
所属連盟:関西学生野球連盟

七大戦ではここ数年5,6,7位決定戦に回っていますが、春季リーグ戦では3校から3勝を上げ、敗れた試合はどれも僅差ゲームが多く着実に力をつけてきています。投手は関西オールスター5リーグ対抗戦に選ばれた経験を持つ樋川大聖投手(4年・水戸第一)、藤原風太(3年・東海大仰星)の二枚看板は盤石。女房役の村山智哉主将(4年・明和)の「村山バズーカ」と称される二塁間送球は1.8秒台とプロ顔負けの速さを誇り、二盗はおろか一塁のリードすら許しません。打棒では西拓樹内野手(3年・西京)が打率.353/出塁率.411/長打率.569を記録し、オールスターでは9番ショートとしてスタメンで出場を果たしています。彼の逆方向への強打も必見です。エース投手を温存する傾向が強いため、上記2選手に次ぐ投手の台頭が待たれます。


大阪大学

優勝回数:2回
前回優勝:2010年(第49回名古屋大学主管)
所属連盟:近畿学生野球連盟

5年前の大阪大学主管の大会を最後に初戦敗退が続き、春季リーグでも3部降格が決定してしまうなど近年元気がないですが、今大会を足がかりに調子を取り戻していただきたいところです。注目選手は、関西オールスター5リーグ対抗戦にて下部リーグ所属ながら、その打棒が評価され5番打者を任されている長尾龍介外野手(4年・神戸)。1年時からスタメンに抜擢されると2年春からは4番を務めあげているチームの支柱です。チーム復活の鍵は相手にビッグイニングを作らせない投手起用でしょう。


九州大学

優勝回数:14回
前回優勝:2012年(第51回九州大学主管)
所属連盟:九州六大学野球連盟

東京大学と共に最多の優勝回数を誇り、ここ数年も初戦を手堅く突破しています。七大戦では乱打戦を展開することがしばしばあり、2年前の3位決定戦ではあわや10点差コールド負けから試合終盤で11点をもぎ取り大逆転勝利を収めたのは記憶に新しいところです。注目選手は、下級生時代からショートとピッチャーの二足のわらじを履いていた岡泰成投手(4年・済々黌)。今季の登板試合はDHの権利を放棄して打席に立ち、先発登板しない試合はレフトの守備に就き打線の中軸も担っています。

 

 

※こちらで名前あげた選手が遠征に帯同していない、または春の時点で引退している可能性もございますので、ご承知の上でご一読お願いいたします。